そろそろクラックを登りたい、沢登りやアルパインクライミングでカムが欲しくなってきたので定番のカムの選び方を知りたい、そんな初級者〜中級者のクライマー達におすすめのカムの揃え方。(万人向けの無難な選び方の紹介なので、カムにこだわりがある方は好きなカムを好きなように揃えてください)
沢登りやアルパインでもカムが欲しいときがある
クラックルートでなければカムは必要ないと思うかもしれませんが、沢登りはハーケンで十分でもカムを使えばスピードアップできるし、アルパインクライミングでは意外とクラックがよく出てきたり、支点になる灌木がなかったり、ビレイポイントでカム以外にプロテクションが取れないときなど、カムが欲しい場面がよくあります。
まずは1セット揃える
クラッククライミングを続けるのならいずれは2セット揃えることになりますが、まずは1セットだけ揃えましょう。沢やアルパインでは1セットでも十分です。クラックルートも1セットでも登れるルートは多いし、パートナーがカムを持ってれば二人合わせて2セットで大抵のクラックルートが登れます。
どの製品がいい?
1セット目は定番中の定番、ブラックダイヤモンド キャメロットを買えば間違いないです。
キャメロットはほとんどのクライマーが使っていて、ネットのルート情報もキャメロットのサイズを基準にしているものが多く、色々なパートナーと組む時もキャメロットなら戸惑うことがありません。
キャメロットはクセがなく、多く流通していてお手頃な値段で入手しやすく、良くも悪くも万能なカムだと思います。
カムのサイズ
キャメロットのサイズ(レンジ)は#のついた番号になっていて、人にもよりますが大体#0.4以下がフィンガーサイズ、#0.5-#2がシンハンドからハンドサイズ、#3がフィストサイズ、#4以上がオフウィズスからワイドサイズになってます。
以下、サイズ(レンジ)はキャメロットを基準に話を進めます。
キャメロットC4/Z4/ULのどれがいい?
現行キャメロットはC4/Z4/ULの3種類。C4は標準的、Z4はコンパクト、ULは超軽量の製品です。サイズは同じ#番号ならほぼ同じレンジです。
#1以上(ハンド〜ワイドサイズ)はC4がいいでしょう。現行のC4は旧モデルより軽量化されています。旧モデルのC4は重いです。アルパインは軽い方がいいので現行モデルのC4がおすすめです。
ULは買わなくていいです。軽量なのは魅力ですが、現行モデルのC4が軽量化されたので大差なくなり、ULは強度が低くワイヤーが切れやすいという欠点があり、沢やアルパインだと割と酷使する(登攀よりも携行時に藪に引っ掛けたり岩に擦れたりする)ので丈夫なC4が安心だと思います。
#0.75以下(スモールサイズ)はZ4がおすすめです。ヘッドの幅がC4より小さくポケットや浅いクラックに決まりやすいためです。軽量でステムも柔軟ですし、C4に比べてメリットしかありません。
上の写真のZ4とC4は1サイズ違うので単純に比較できませんが、Z4のヘッドの幅はC4よりかなりコンパクトなことが分かります。
まずは#0.3-#3を揃えよう
最初に登るクラックはハンドクラックが中心になります。ただしハンドクラックでもフィンガーサイズのカムはよく使うので、#0.3〜#3のサイズを揃えるのがいいです。
キャメロットは#1以上はC4、#0.75以下はZ4がいいので、この写真のような構成(キャメロットZ4 #0.3-#0.75、キャメロットC4 #1-#3)になります。これだけあれば、初級者向けの大抵のハンドクラックは対応できます。
沢登りでは#0.3-#1程度の小さめのカムをよく使い、アルパインだと#0.5-#3程度のハンドサイズをよく使います。沢登りやアルパインでは、軽量化のためカムは#0.4と#0.75だけ、#0.3と#0.5と#1だけ、のように1サイズ置きで数本だけ携行することもよくあります。
#0.2と#4を買い足す
ハンドクラック中心のルートでも、たまに極小サイズの#0.2、オフウィズスの#4が欲しい時があります。必要になったら#0.2と#4を買い足しましょう。
上の写真はキャメロット#0.2相当に対応するトーテムカム0.50と、キャメロットC4 #4を追加しています。自分は2セット目がトーテムカムなのと、キャメロット#0.2以下はレンジが狭いのでトーテムカムにしてみました。もちろんZ4の#0.2でもいいです。トーテムカムについては2セット目で説明します。
#0.1以下はどうしても必要なら
#0.1以下の極小サイズのカムは、必要な場面があまりないのと、耐荷重が低いこともあり、積極的に買う必要はありません。フィンガークラックをやり込みたいなど、どうしても必要になったら買い足します。#0.1より先にナッツを揃えた方がいいかもしれません。
ワイドクラックをやるなら#5-#6
ワイドクラックは、ルートを選べば#4以下で足りるエリアも多いです。まずはそのようなルートを登ってみて、ワイドクラックが面白い、続けたいと思ったら#5-#6を買えばいいと思います。
キャメロットには#7、#8もありますが、あまり流通せず、持っている人は変態(褒め言葉)なので考えなくていいです。
カムのカラビナも忘れずに
カムには同色のカラビナを一緒に買って常につけておきましょう。カラビナをつけておかないとラッキングのときに困りますし、使う時にいちいちカラビナをつけるのも面倒です。
カラビナの色をカムに合わせればギアループから取り出す時に間違えにくいです。
カラビナの重さは軽量なものがいいです。小さいと扱いづらいかもと思うかもしれませんが、実際は冬期にグローブつけててもすぐ慣れますし、たくさん持つので軽量化を優先します。
おすすめのカラビナは、私の知ってる限りではブラックダイヤモンド ミニワイヤー、またはメトリウス FSミニ2がいいです。ミニワイヤーはゲートが固め、FSミニ2はゲートが柔らかめです。好みで選べばいいと思います。
カラビナをネット通販で買うときは1個ずつだと送料が掛かるので、将来揃えるカムの色もまとめて買うのがお得です。
どこで買う?
買う前に手に取ってみたい、相談したいなら実店舗で買うのがいいですが、買うものが決まっていればネット通販で安いタイミング、ポイントがつくタイミングを狙うのがお得です。
カムは在庫が揃ってないことも多いので、使いたい時期より早めから準備して、1本ずつでも入荷しだい買っていくと揃えやすいです。
2セット目
パートナーがカムを持っていれば1セットで十分ですが、カムを持ってない相手と登るとき、長いルートや同じ幅のクラックが続くルートを登るときは2セット目が必要になってきます。
アルパインだと、1セットで足りるルートでもビレイポイントでカム以外にプロテクションが取れず2セット目が欲しいときがあります。
2セット目はどの製品?
登攀中はできるだけ余計な気遣いを排除したいので、1セット目と同じキャメロットC4/Z4が無難です。
せっかくだから別のカムを試したいなら、トーテムカムがオススメです。トーテムカムは独特の構造を持つカムですが、サイズ感や色がキャメロットと近いので、キャメロットと同じ感覚で扱えます。
トーテムカムはサイズ感がキャメロットと近いですがレンジが体感的にも1-2mm程大きいです。そして、片効きに強い(カムローブ2枚だけでも静荷重なら保持できる)、フレアクラックに強い、浅い水平クラックに弱い、キャメロットより少し重い、といった特徴があるようです。
2セット目のサイズはハンド中心
2セット目は、ハンドサイズのカムが複数必要になる場面が多いので、ハンドサイズを中心に揃えるといいでしょう。最小限で済ますなら#0.5-#2、余裕を持つなら#0.4-#3があると安心です。
上の写真は2セット目の構成の例です。自分はスモールサイズをトーテムカムにしてみました。#1以上の大きなサイズはどのカムを使っても大差ないと思うのでキャメロットC4にしています。
ワイド(#4以上)は、落ちることが少ないし、別サイズのカムでセット位置を変えやすかったり、スライドで対処できるので、1セットあれば大体足ります。
フィンガー(#0.4以下)は、レンジ幅が少なくシビアで多めに打ちたい場面もあるので、複数欲しくなったら2セット目を買い足します。
自分の2セット分のカムの構成は下の写真のようになりました。
3セット目以降
どんどん登れるようになって、もっとカムが必要になったら買い足していきましょう。別の製品を検討してもいいと思います。
カムの手入れ
カムは使っていると汚れてきたり、砂が入ったり、動きが悪くなってきます。城ヶ崎では塩がつきます。そうなったら水洗い、自然乾燥して、金属の可動部にシリコンオイルを差します(岩との接地部や樹脂部分にオイルがつかないように注意)。ワイヤーが曲がったりズレたら優しく手で曲げ戻します。
カムは消耗品
カムは消耗品です。カムローブが削れたり樹脂パーツが劣化します。墜落したら樹脂部分が割れることがあります。10年保てばいい方かもしれません。沢やアルパインでは携行しているだけでも引っ掛けたりぶつけたりして傷つきます。ワイヤーくらいなら直せるかもしれませんが、ダメになってきたら買い換えましょう。
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