寸又川 下西河内 遡行【南アルプス深南部 沢登り】

南アルプス深南部の大井川水系、寸又川の下西河内(しもにしこうち)を遡行しました。この流域では逆河内に次いで悪い沢とされ、人があまり踏み入れない深く長いゴルジュは厳しくも美しく壮大でした。

下西河内のゴルジュをへつる
下西河内のゴルジュをへつる

1日目

下西河内は深南部の黒法師岳を源頭に寸又川に流れこむ沢です。アプローチは寸又峡温泉に車を停めて千頭ダムまで林道を10km歩きます。そこから寸又川を渡渉すると下西河内の出合い。

千頭ダム
千頭ダム

千頭ダムを渡り左岸の軌道跡を少し歩いて、下西河内出合あたりで寸又川を渡渉。水深は膝くらいでした。水量は並でしょうか。

下西河内 出合
下西河内 出合

下西河内を30分ほど進むとゴルジュが始まります。

下西河内 30分程でゴルジュが始まる
下西河内 30分程でゴルジュが始まる

へつりからの泳ぎ。水圧に耐えながら滝の水線を登ります。

下西河内 泳ぎ
下西河内 泳ぎ

水線を行ったり渡渉したり泳いだり、へつったり巻いたりして進みます。

下西河内 へつる
下西河内 へつる

暑がりの自分は沢登りではいつも長袖Tシャツにズボンという普通の夏山登山の服装ですが、今回は本格的な泳ぎ沢とのことで、冷えない様にファイントラックの「フラッドラッシュ(ジップネック)」という沢登り定番のシャツを新調してみました。

フラッドラッシュは泳ぎ沢にとても快適ですね。水にずっと浸かってても全然寒くなりません。念のためモンベルのライトネオプレンも持ってきたのですが、暑がりの自分はフラッドラッシュだけで十分でした。下にはファイントラックのドライレイヤーを着ています。ズボンはカミノパンツ。

巻きのときは動いていると少し暑くなりますが、生地が厚い割には風が通り、地上では厚手の長袖Tシャツと同じ感じです。乾きも早く、水から上がっても着たままで寝る前には乾いていたので、3日間寝る時も着替えずに過ごせました。

下西河内 へつる
下西河内 へつる
ゴルジュは続く
ゴルジュは続く

長いゴルジュが一旦開けたのでちょっと早いですが幕営地を探して780m地点でタープ泊。幕営適地はいくつかあるので困りませんが、ヒルがいるので落ち着きません。ヒル対策でズボンの裾にテーピングを巻いたり沢靴を履いたまま過ごしましたが、足がふやけるので乾いた靴下とサンダルを持ってきた方が良かったかな。

焚き火をたいて服を着乾かしながら夕食。メニューは素麺や焼き鳥など。そして寝る時はヒルがいやなのでシュラフにしっかり入ります。

ゴルジュが一旦開けたので早めの幕営 ヒルいる
ゴルジュが一旦開けたので早めの幕営 ヒルいる

2日目

2日目の朝食はアルファ化米とインスタントの味噌汁など。2日目以降の食事や行動食は軽量化のためアルファ化米やカップ麺、パンなどです。沢は水がたっぷりあるので軽量化できていいですね。朝食を済ませたら支度をして遡行再開です。

2日目は緩やかな渓相から
2日目は緩やかな渓相から

そしてまたゴルジュです。

そしてまたゴルジュ
そしてまたゴルジュ

高巻きは結構悪いです。800mを過ぎたあたりのワイヤーの張られてる右岸の高巻きのトラバースは岩がヌメって滑ります。

下西河内 悪い巻き
下西河内 悪い巻き

巻きから850m地点に懸垂下降で降りてみたところ、その先のゴルジュが悪そうなので高巻きすることに。右岸を200m大高巻きしました。あとで調べたところ、ゴルジュの沢筋も小さく巻きながら突破できるようですね。

下西河内 大高巻き
下西河内 大高巻き

地形図で緩そうなところに懸垂下降で降りましたが、ゴルジュはまだまだ続きます。

懸垂下降した先はまたゴルジュ
懸垂下降した先はまたゴルジュ
ジャンプ
ジャンプ

シューズはラバーソール2名、フェルトソール2名。自分はラバーソールでしたが、概ねフリクションは良く、巻きもそのまま行けましたが、一部日陰のヌメッた岩はちょっと滑りました。フェルトソールでも沢筋は大丈夫なようでしたが、高巻きはチェーンスパイクを履いていました。

下西河内 またへつる
下西河内 またへつる

水量が多くて登れなさそうな5m滝が出てきたので右岸を高巻きます。

5m滝は高巻き
5m滝は高巻き
下西河内 高巻き
下西河内 高巻き
下西河内 高巻きからの懸垂下降
下西河内 高巻きからの懸垂下降

高巻きからの懸垂下降、そしてようやく渓相が開けました。

ようやく渓相が開けた
ようやく渓相が開けた

もう難所は出てこないよねーと願いながら進んでいくと、

下西河内 三俣の40m滝
下西河内 三俣の40m滝

1180m地点の三俣でラスボス出てきました。進みたいのはこの大滝の上なんですよね。終わった……

下西河内 三俣の40m滝 ラスボス
下西河内 三俣の40m滝 ラスボス

と思ったら、左岸を巻いて登れました。良かった良かった。

40m滝を越えると緩やかな渓相
40m滝を越えると緩やかな渓相

この後は穏やかな渓相……とフラグを立ててしまうといけないので、警戒しつつ進みます。

そろそろいい時間なので幕営適地を探して1270m地点でタープ泊。いい感じの適地がありました。湿っぽいですがヒルはいません。焚き火して服を乾かして夕食を作って食べて就寝。標高が上がったためか夜はちょっと冷えます。夏でも標高の高い沢筋はシュラフ必須ですね。

2日幕営地はヒルいなくて良かった
2日幕営地はヒルいなくて良かった

3日目

3日目、あとは左俣を詰めるだけです。でも油断するとフラグが立って難所が出てきてしまいそうなので警戒して進みますが、快適な階段状の沢でした。

下西河内 左股を詰める
下西河内 左股を詰める

ちなみに自分が背負ってるザックはオスプレーのミュータント52です。泊まりの沢登りやアルパインクライミングからアイスクライミングまで、荷物がちょっと多い登攀系の登山にとても便利で気に入ってます。

最後の詰めはザレでしたが、尾根に上がらず沢筋を稜線まで詰めることができました。

下西河内 左股 詰めのザレ
下西河内 左股 詰めのザレ
ようやく長い長い沢を抜けて稜線へ
ようやく長い長い沢を抜けて稜線へ

長い長い沢を抜けてやっと二ツ山1810mの稜線に抜けることができました。

下西河内の遡行グレードは4級に近い3級上でしょうか。今回は水量が並のようで水線は難しくなかったですが、巻きが岩が脆くて悪かったです。そして行程が長い。大変な遡行でしたがいい経験になりました。

黒法師岳
黒法師岳

稜線は眺望がとても良く、風が涼しい。シロヤシオがたくさん生えています。

爽やかな稜線歩き
爽やかな稜線歩き
前黒法師岳
前黒法師岳

ヘリポート平の水場に寄って一休み。水場は平地を少し歩き消化器を目印にザレた斜面を少し降りるとあります。冷たい湧水でとても美味しい。

ヘリポート平
ヘリポート平

木イチゴが群生して実がたくさんなってました。

ヘリポート平は木苺が群生していた
ヘリポート平は木苺が群生していた

ヘリポート平で一休みしたあと、もうひと頑張りして前黒法師岳に登ります。頂上は眺望なし。

前黒法師岳 頂上
前黒法師岳 頂上

前黒法師岳からあとは長い下りです。前黒法師岳登山口を経て林道を歩き寸又峡温泉に到着。

寸又峡温泉の日帰り温泉「翠紅苑 白珠の湯」で疲れた体を癒やしました。ぬるめでトロトロのアルカリ単純硫黄泉はふやけてボロボロの足裏にも良さそうでした。